MB教団よきおとずれ月刊誌の原稿より

東北大震災からまもなく一年が
来ます。津波が家々を飲み込み
、そして逃げ惑う中で九死に一生
を得た人、波にさらわれてしまっ
た人々。大震災の悲惨さは今なお
私たちの脳裏に焼き付いたままで
す。被災された方々の一日も早い
復旧・復興を祈るものであります
。さて、今年は私たちの教会にお
いて、一人の姉妹が成人式を迎え
ました。礼拝後昼食時に、ささや
かなお祝いの時を持ちました。今
年は124万人が成人を迎えたの
ですが、例年のぶちこわしの成人
式の報道にはいつもうんざりして
いたのですが、今年は、少し様相
が違うと感じたのです。それは、
マイクを向けられた成人たちのス
ピーチの内容でした。日本のため
に自分も頑張りたい、あるいは技
術を身につけて世界に負けない日
本にしたい。また震災の復興のた
めに自分も何かしたい。将来何々
の職業に就いて、人のために役立
ちたいといったものでした。20
01年のアメリ同時多発テロ
時、彼らは9、10歳頃です。そ
の後二十歳になるまでの10年間
は、長引く不況、リーマンショッ
ク、最近ではEU危機等。また大
きな自然災害や様々な事件や事故
が世界中でありました。現に彼ら
は今非常に厳しい就職戦線の只中
です。まさに将来に希望を持てな
い中での成人たちのスピ―チや抱
負には何か頼もしいものを感じた
のです。それは厳しい時代のなか
でのみ培われて行くものではない
でしょうか。激動と試練の時代に
偉大な人物を多く輩出しているこ
とは歴史が証明しているのです。
もちろん試練に会わないほうがい
い、しかしその試練を通してでな
ければ習得できないものもあるの
です。たとえば、心病んだ人の気
持ちを少しでも理解できるのは、
同じように心を病んだという経験
をした人ではないでしょうか。私
自身も今から10年前に、心を病
み苦しみました。何度も牧師を辞
めようと思いましたが、そのたび
に多くの人に励まされ、祈ってい
ただいて立ち直ることができたと
いう経験、私が生まれてまもなく
両親の離婚、親戚に預けられて育
つ中での経験、小さいとき体が弱
かったこと、22歳のときに開腹
手術後の強烈な痛みの経験、無神
論による思想活動の虚しさ、失業
等。そして牧師になってからの様
々な経験。これらは、神様の御用
の妨げとなることはありませんで
した。もちろん今あるはただ神の
恵みとあわれみというほかありま
せんが、困難な今日の時代の中で
、試練の中に置かれている人も少
なくないと思います。試練の度合
いは人によって様々ですから、容
易にその人の試練を推し量ること
はできません。しかし、神のみこ
とば〔聖書)はその人にとって、
適切にかつふさわしく語られるの
です。悲しむ人を慰め、苦しむ人
を励まし、悩む人をいやし、試練
の中にある人を助けてくださるの
です。順風満帆の時には、あまり
耳を傾けなかったみことばが、ひ
とたび試練や困難に直面した時に
、実に素直に、そして自分にとっ
て必要なみことばを強く求めるよ
うになるのです。これもまた試練
を通してのみ学ぶ貴重な信仰の糧
であり、みことばの糧なのです。
『神は、どのような苦しみのとき
にも、私たちを慰めてくださいま
す。こうして、私たちも、自分自
身が神から受ける慰めによって、
どのような苦しみの中にいる人を
も慰めることができるのです。』
(第2コリント1章4節
と語るパウロもまた数々の試練によって
信仰を高められたひとりなのです。